糖尿病・甲状腺疾患・内科一般
土曜日・日曜日とも診療 宮前平駅前
2024年7月7日
このページでは甲状腺疾患について、以下の目次に沿って説明しています。
コラム復活第1回目は、甲状腺についてお話ししようと思います。そもそも甲状腺って何?という方もいらっしゃるかもしれません。甲状腺は首、男性でいう喉仏あたりにある蝶のような形をしています。大きさは10~15グラムととても小さく、普段あまり注目されることの少ない(?)臓器です(ちなみに心臓は200~300グラム、人体最大の臓器と言われる肝臓は1~1.5キロあります)。
ちなみに、健康診断で首を診察されたご経験がある方もいるかもしれません。あれは主に甲状腺の腫れを確認しています。といっても甲状腺はとても小さい臓器ですので、通常は体表から触れることはありません。ですので、健康診断で「甲状腺が腫れています」と言われたら、一度病院での検査をオススメします。
話が逸れましたが、甲状腺は小さいながらもとても大切な臓器の一つです。甲状腺からは「甲状腺ホルモン」が作られます。甲状腺ホルモンは体の代謝をアップさせる働きがあり、身体の様々な臓器に作用して効果を発揮します。
ですので、甲状腺ホルモンのバランスが崩れると、様々な症状が出現します。以下に示すような症状が出現することがありますので、これらの症状に該当する方は一度甲状腺を調べてみるといいかもしれません。
甲状腺ホルモン高値 | 甲状腺ホルモン低値 | |
---|---|---|
心臓 | 動悸、脈が速くなる(頻脈)不整脈(心房細動など) | 脈が遅くなる(徐脈) |
発汗 | 増える、手足が震える | 減る |
エネルギー消費 | 増えるので異常に食欲が増えたり、食べても体重が減ってしまうことがあります。 | 下がるので体重が増えたり、浮腫が出現することがあります。 |
精神面 | 元気で活動的となることがあります。 | 気持ちが沈み、うつっぽくなることがあります。 |
消化管 | 下痢 | 便秘 |
睡眠 | どちらも不眠となりやすい傾向があります。 |
他の病気にも当てはまることですが、甲状腺の病気は疑わないと見つけられません。例えば便秘が長く続いていた原因が甲状腺機能低下症だった、不眠の原因がバセドウ病だったなんていうこともあります。そのため最初は甲状腺の病気と気付かず、他科を受診してしまうこともあります。勿論患者さんが悪いわけではありません。
他科で甲状腺の病気の可能性を疑われて、当院に受診されて甲状腺疾患の診断に至った患者さんもいらっしゃいます。以下は私がこれまで経験した患者さんのほんの一例です。
ここからは甲状腺の病気にはどんなものがあるのかを簡単にご説明します。
甲状腺の病気は、(1)ホルモンの病気、(2)しこり・結節に大きく分けられます。
(1)ホルモンの病気ですが、代表的なものがバセドウ病と橋本病(慢性甲状腺炎)です。甲状腺ホルモンの病気は大半がこの2つの病気で、いずれも女性の方に発症することが多いです。ちなみに、バセドウ病=甲状腺ホルモンが高くなる病気ですが、橋本病=甲状腺機能低下症ではありません。橋本病は慢性甲状腺炎として定義される病気であり、必ずしも甲状腺機能は低下しません。甲状腺機能が正常な橋本病患者さんもいらっしゃいます。その他のホルモンの病気としては無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎があります。
(2)しこり・結節については表のとおり良性、悪性に分類されます。甲状腺のしこりを指摘されるきっかけとしては、健康診断の診察で首の腫れを指摘された、CTやMRI検査で偶然甲状腺に腫瘍を指摘された等があります。しこりを指摘された場合は、一度は超音波検査にて評価することをお勧めします。なぜなら超音波検査は甲状腺のしこりの評価において最も簡単、それでいて正確で、かつ患者さんへの負担が少ない検査だからです。当院では積極的に甲状腺の超音波検査を行い、しこりの評価・診断を行っております。
ただし良性・悪性の判断に迷う場合は細胞診検査(超音波で腫瘍を確認しながら、細い針を首に刺して細胞を採取し、病理診断を行うための検査)を推奨しております。細胞診検査が必要な場合は、専門病院にご紹介させていただきます。
いかがでしたでしょうか。今日は甲状腺についてお話しさせていただきました。
甲状腺は、その存在を知らないと病気に気づけない、小さいながらも非常に奥の深い臓器です。甲状腺について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。